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会社の負債を整理する場合の手続とは?どの手続を選択すべき?

1 債務を整理する手続は、破産手続だけではない?
会社の資金繰りがうまくいかない。資金がショートしてしまい、来月から借入金の返済もできないし、買掛先業者に支払うお金がない。
そんな場合、会社の負債を整理するためには、破産以外の方法については思いつかないため、破産しかないのではと思う経営者の方が多いでしょう。
でも、ちょっと待って下さい。会社の負債を整理するための手続は、破産手続だけではありません。手続としては他に、民事再生手続、会社更生手続というものがあります。
今回は、各手続の大まかな内容と、どの手続をとるべきかについて簡単にですが説明していくことにしましょう。
2 清算型手続と再建型手続
裁判所を通じて債務を整理する手続としては、清算型手続と再建型手続の2つに分けることができます。
清算型手続とは、簡単に言うと、会社の事業をすべて停止し、会社の財産を売却し、売却して得られたお金を債権者へ配当する手続です。会社は手続終了後に消滅します。
清算型手続にあてはまるのは破産手続です。清算型手続きとしては、他に、特別清算という手続もありますが、マイナーな手続ですので、ここでは割愛させていただきます。
再建型手続とは、破産と異なり、会社の事業を停止することなく、事業を継続して、債権者へ圧縮した負債を計画通りに支払っていく手続です。会社は手続終了後も存続し、消滅するわけではありません。
再建型手続にあてはまるのは民事再生手続と会社更生手続です。
以下では、破産手続、民事再生手続、会社更生手続について、詳しく説明します。
3 「破産手続」とは?
倒産手続のなかで、耳慣れている人も多いことからも分かるように、倒産手続の中で圧倒的に取り扱い件数が多いのが破産手続です。
ご存知かと思いますが、個人でも、会社でも利用できる手続です。
清算型の代表である破産手続は、原則として、破産をする会社や個人の財産を調査し債務者の財産を売却したうえで、その売却したお金を債権の種類による優先順位や債権額に応じて公平に配当することが予定されています。
そして、その財産の調査、換金や債権者への配当を、裁判所が選任する破産管財人(一般に債務者や債権者と利害関係のない中立な弁護士)が行うことになっています。法人の破産では、通常、この破産管財人が選任されます。
4 「民事再生手続」とは?
民事再生手続は、個人でも、会社でも利用できる手続です。
民事再生手続は、倒産した法人や個人が主体となって、事業を継続し、再生するためのスケジュールを作成していく手続です。経営陣の交代がなされないというところに特徴があります。これは、DIP型(Debtor In Possession)手続と呼ばれ、破産や会社更生と異なります。
この手続では、最終的に、事業を継続しつつ、圧縮した負債を計画通りに支払うことになります。
なお、この手続内では抵当権者などの担保権を有する権利者は「別除権者」と呼ばれ、民事再生手続と関係なく担保を行使するこができます。
たとえば、抵当権者は競売にかけ、その売却代金を債務の弁済に充てることが自由にできてしまうのです。
民事再生手続を利用した会社としては、ライブドア、スカイマークなどが有名でしょう。
5 「会社更生手続」とは?
会社更生とは、名前からも分かるように個人では利用することができない手続で、しかも株式会社だけが利用できる手続です。
この手続も、最終的には、民事再生手続と同様、<bを継続しつつ、圧縮した負債を計画通りに支払っていく< bなります。<br=””>このように会社更生手続は、再建型の手続という点で民事再生に類似していますが、会社更生と民事再生との主な相違点が3つあります。
まず1つ目としては、会社更生手続では、民事再生手続が会社や個人が財産の管理をしていく手続であるのとは異なり、裁判所により選任される更生管財人と呼ばれる弁護士が手続を主導します。民事再生手続と異なり、事業を継続していくものの通常は経営陣の交代がなされます。ただし、近似では、裁判所の運用で、旧経営陣が更生管財人に選任された例もあります。
2つ目としては、会社更生手続では、担保権者も手続外で担保権の行使をすることが包括的に禁止されます。「更生担保権者」と、手続内に組み込まれます。
そのため、事業を継続する上で、重要な財産に担保権が設定されており、担保権の実行の阻止が話合いでは不可能である場合には、会社更生手続の利用をすることがよいでしょう。
3つ目としては株主の交代が起こるのが原則です。通常、民事再生手続では株主の交代は起こりません。
このように、会社更生手続は債権者や関係者に与える影響が大きいため、厳格な手続となっており、その分手間とコストがかかる手続となっています。そのため、裁判所に納める費用(予納金といいます)が民事再生手続と比較して高額となっています。それだけの費用をかけるだけのメリットのある会社向きの手続ということになります。
会社更生手続を利用した会社としては、マイカル、日本航空、武富士、ウィルコムなどが有名でしょう。</bを継続しつつ、圧縮した負債を計画通りに支払っていく<>
6 会社の負債を整理する場合に、どの手続を選択すべきか
(1)清算型手続と再建型手続のどちらを選択すべきか
このように、法的な倒産手続には、大きく分けて清算型手続と再建型手続の2種類あり、事業継続をしても収益が改善しない場合、簡単に言うと赤字が継続する場合は、破産手続を選択することになります。
他方で、事業継続をすれば収益性が改善し、圧縮した負債の返済が可能である場合、簡単に言うと赤字が続かない場合には、再建型手続を選択することになります。
赤字が続くかどうかを見極める際には、スポンサーの有無、資金繰りの状況、従業員の状態、在庫や生産設備の状況などを考慮することになります。
(2)民事再生手続と会社更生手続のどちらを選択すべきか
まず、そもそも会社が株式会社でない場合には、会社更生手続を利用できないので、民事再生手続を選択することになります。
また、会社更生手続は予納金の額が高額なため、裁判所に納める予納金を確保できない通常の中小企業も民事再生手続を選択することになるでしょう。
また、上記のとおり、事業を継続する上で、重要な財産に担保権が設定されている場合、民事再生手続ですと個別の債権者(別除権者)との協定により競売などの担保権の実行を防ぐこともできますが困難なことが多いです。そのため、個別の協定を結ぶことができない場合には、担保権の実行を包括的に防ぐことのできる会社更生手続を選択することが多いでしょう。
また、返済の計画をたてる場合には、債権者の協力も必要です。そのため、債権者からの旧経営陣の続投に対する意向によって民事再生手続か会社更生手続のいずれかを選択することもあります。すなわち、債権者が旧経営陣の続投に対して、反対をしていない場合には、経営陣が通常変わらない民事再生手続を選択し、旧経営陣の続投に対して、反対が強い場合には、会社更生手続を選択するということになるでしょう。
(3)最後に
以上、手続を選ぶための簡単なメルクマールをご説明しましたが、倒産手続を利用する際には、様々な具体的な事情を考慮した上で、再生可能性があるのかどうかなどを慎重に見極める必要があり、その判断には専門的な知識及び経験が必要です。
実際に、会社の負債の整理を検討される際には、倒産手続に精通した弁護士等の専門家にご相談することをおすすめします。
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