金の卵を探して育てる!ベンチャーキャピタルの平均年収と種類、必要な3つのスキル

「ベンチャーキャピタルってどんな仕事をしているの?」
「ベンチャーキャピタリストになると高収入って本当?」

『起業後進国』といわれて久しい日本ですが、2022年3月の経団連「スタートアップ企業の育成に向けた提言」により国内でもスタートアップの活性化が期待されています。

そんな中、転職市場でも注目を集めているのが、高い成長率が見込める未上場企業に対してファイナンスと経営の両面で支援するベンチャーキャピタルです。

そこでここでは、ベンチャーキャピタルの平均年収と合わせて、ベンチャーキャピタルの種類やベンチャーキャピタリストに求めれる3つのスキルについて解説していきます。

これを読めば『金の卵』でもあるベンチャー企業をサポートするベンチャーキャピタルの仕事に興味が湧いてくることでしょう。

1.ベンチャーキャピタルの平均年収

まず、ベンチャー企業向けの投資を行う投資ファンドの総称であるベンチャーキャピタルの平均年収について解説します。

ベンチャーキャピタルの平均年収

  1. ベンチャーキャピタリストの平均年収
  2. 異業種の平均年収との比較

次に1つずつ解説していきます。

(1)ベンチャーキャピタリストの平均年収

ベンチャーキャピタリスト(ベンチャーキャピタルの投資担当者)の上場3社の平均年収は約937万円です。

国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」の統計によると日本の給与所得者の平均給与は433万円であることと比較しても、かなりの高収入です。

ベンチャーキャピタル企業名 平均年収(推定) 平均年齢
フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 633万円 41歳
日本アジア投資株式会社(JAIC) 957万円 49歳
ジャフコ グループ株式会社 1,220万円 44歳

ベンチャーキャピタルは基本的には実力主義で、成功報酬によって給料が決定するため一概にはいえませんが、平均年収をみても高水準であるところが多いです。

役職別に見ても高水準です。

マネージングディレクター・ ジェネラルパートナー 1,500万円以上
マネージャー 1,200万円以上
シニアアソシエイト 800万円以上
アソシエイト 600万円以上

また、ベンチャーキャピタルでは、投資の成功(IPOやM&A)によるイグジットで大きな利益を出せばそれに見合った報酬(ボーナス・賞与)を支給する規定を設けている会社も多く、規模によっては数千万円の年収を得るのも不可能ではありません

基本的な年収が高いだけでなく、プラスアルファの金額も大きなベンチャーキャピタルは、夢のある仕事であるといえるでしょう。

(2)異業種の平均年収との比較

次に、ベンチャーキャピタルと異業界の平均年収と比較してみましょう。

業界 平均年収(男女平均) ※2021年度
ベンチャーキャピタル 937万円
金融 455万円
メーカー 455万円
総合商社 434万円
IT/通信 433万円
建設/プラント/不動産 416万円
メディカル 410万円
インターネット/広告/メディア 405万円
サービス 367万円

ベンチャーキャピタルの平均年収は、異業界と比べても2倍以上の高水準であることがわかります。

ベンチャーキャピタルは、投資したベンチャー企業が成功すれば多額の値上がり益を得ることができます。

しかし、そうでなければ投資資金の回収が不可能になるなどリスクも高いため、ベンチャーキャピタリストには高い先見性や財務分析能力、投資するベンチャーの分野の専門知識等が求められます。

対象がベンチャーという特殊性から求められる高度な専門性やリスクにより、ベンチャーキャピタリストの年収が高くなるのも当然ですね。

2.ベンチャーキャピタルの種類

次に、ベンチャーキャピタルの種類について解説していきます。

日本においても成長過程にある企業を応援するベンチャーキャピタルは増加傾向にあります

例えば、停滞する地方経済を背景に融資先が減った地方銀行が新たな投資先を求めて、あるいはベンチャーキャピタルで経験を積んだ社員が退職後に機関投資家などの資金を集め投資する独立系など、新たにベンチャーキャピタルをスタートするケースが増えています。

ベンチャーキャピタルの種類

  1. 金融系ベンチャーキャピタル
  2. 政府系ベンチャーキャピタル
  3. 事業会社系ベンチャーキャピタル
  4. 独立系ベンチャーキャピタル
  5. 地域系ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルと一言でいっても、母体や投資対象や投資スタイル、目的や規模などには各社で違いがあります

そのため、転職先としてベンチャーキャピタルをお考えなら、目的や対象をじっくり吟味した上で選ぶことが重要です。

代表的なベンチャーキャピタルと合わせて解説していきます。

(1)金融機関系ベンチャーキャピタル

FAS 年収 ランキング⑤

1つ目のベンチャーキャピタルは、金融機関系のベンチャーキャピタルです。

大手の銀行や証券会社、信用金庫などの金融機関が母体となっているため資金が潤沢で、投資金額や投資数が大規模になる傾向にあります。

具体的には、三菱UFJキャピタル株式会社SMBCベンチャーキャピタル株式会社ニッセイ・キャピタル株式会社三井住友海上キャピタル株式会社ジャフコ グループ株式会社(JAFCO)などがあります。

(2)政府系ベンチャーキャピタル・大学系ベンチャーキャピタル

過去の実績

2つ目のベンチャーキャピタルは、政府系ベンチャーキャピタル・大学系ベンチャーキャピタルです。

政府系ベンチャーキャピタルは、公的資金をもとに投資しているベンチャーキャピタルで、民間のベンチャーキャピタルほどハイリターンを期待して出資するわけではありません。

産業の活発化や雇用促進のため、資金調達が難しいけれども将来性がある有望な中小企業をサポートするのがメインで、いわば、国からの起業家の公的支援の枠組みのひとつとみてよいでしょう。

政府系ベンチャーキャピタルには、株式会社INCJ東京中小企業投資育成株式会社名古屋中小企業投資育成株式会社大阪中小企業投資育成株式会社などがあります。

一方、大学系ベンチャーキャピタルは、主に大学発のスタートアップを支援するベンチャーキャピタルです。

2022年4月から指定国立大学9校のスタートアップへの直接投資が可能となっており、今後も活発化するとみられています。

大学系ベンチャーキャピタルとして、株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社京都大学イノベーションキャピタル株式会社などが有名です。

(3)事業会社系ベンチャーキャピタル

3つ目のベンチャーキャピタルは、事業会社系ベンチャーキャピタルです。

その名の通り事業会社が母体となっており、別名CVCともいわれています。

母体そのものが直接的にファンド運営をするケース、投資子会社を設立して間接的にファンド運営をするケースなどがあります。

事業会社系ベンチャーキャピタルとして、STRIVE株式会社株式会社電通イノベーションパートナーズZ Venture Capital株式会社などがよく知られています。

(4)独立系ベンチャーキャピタル

4つ目のベンチャーキャピタルは、独立系ベンチャーキャピタルです。

独立系ベンチャーキャピタルとは、金融機関や国・大学、事業会社などに頼らず、独自資本で事業運営しているベンチャーキャピタルです。

母体となる親会社がないので、縛られることなく見込んだベンチャーに携われるというメリットがあります。

独立系ベンチャーキャピタルには個性豊かな会社が多く、グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社グローバル・ブレイン株式会社日本ベンチャーキャピタル株式会社(NVCC)などが有名です。

(5)地域系ベンチャーキャピタル

成長意欲がありひたむきに努力できる人

5つ目のベンチャーキャピタルは、地域系ベンチャーキャピタルです。

特定の都道府県、市町村にある企業を対象に投資実行する地域特化型のベンチャーキャピタルです。

地方は、雇用増加を支える創業・ベンチャー企業・成長企業に対する支援体制が十分でないところが少なくありません。

その現状を改善するため、地域の経済成長を牽引する事業者を支援し、地域活性化を目指します。

具体的には、北海道ベンチャーキャピタル株式会社新潟ベンチャーキャピタル株式会社などが有名です。

3.ベンチャーキャピタルで求められる3つのスキル

コンサルタントに向いている人の3つの特徴

ベンチャーキャピタルで活躍するために必要なスキルを解説します。

ベンチャーキャピタリストに必要なスキル

  1. 情報収集能力と財務分析力
  2. コミュニケーション能力
  3. 高度な専門性・役立つ資格

土の中から芽を出そうとしているベンチャー企業や、ようやく芽が出たばかりのベンチャー企業のスタートアップを「出資」という形でサポートするベンチャーキャピタルはやりがいのある仕事です。

次に一つずつ見ていきましょう。

(1)情報収集力と財務分析力

1つ目のベンチャーキャピタルで活躍するために必要なスキルは、情報収集力と財務分析力です。

ベンチャーキャピタルが行うベンチャー企業への出資はハイリスクハイリターンです。

たくさんあるベンチャー企業の中でも成功するのは残念ながら一握りです。

出資したベンチャー企業が成功すれば多額の値上がり益を得ることができますが、もし、出資したベンチャー企業が失敗すれば、ベンチャーキャピタルも大きな損害を被ることになります。

そうならないように、投資先の成長をファイナンスだけでなく「経営支援」として社外取締役やオブザーバーの派遣などを行い支援しますが、それらの尽力もその企業が失敗してしまえば水の泡となってしまいます。

しかも、一般的に、未上場のベンチャー企業にベンチャーキャピタルが投資してから上場を見届けるまで5~7年の時間がかかるといわれています。

そのため、ベンチャーキャピタリストには、投資対象となる優良なベンチャー企業を見つけ出す情報収集力と、その成長性・財務状況等を分析する能力が求められます。

(2)コミュニケーション能力

2つ目のベンチャーキャピタルで活躍するために必要なスキルは、コミュニケーション能力です。

ベンチャーキャピタルは、有望なベンチャー企業を見つけ出して出資を募って投資して終わりではありません。

投資したベンチャー企業の企業価値を高め上場にもってけるよう必要な経営支援なども行うため、ベンチャー企業の経営陣と円滑なコミュニケーションをとり続けなければなりません

そのため、ベンチャーキャピタリストには、ベンチャー企業のトップや社員からビジネスパートナーとして信用してもらうために高いコミュニケーション能力が不可欠なのです。

また、経営サポートとしてベンチャー企業に役立つ取引先や提携先などの紹介も行います。

ベンチャーキャピタリストは、周囲と良好な関係を築く高いコミュニケーション能力がないと務まらない仕事であるといっても過言ではありません。

(3)高度な専門性・役立つ資格

3つ目のベンチャーキャピタルで活躍するために必要なスキルは、高度な専門性と役立つ資格です。

ベンチャーキャピタルで仕事を行う上で、実は必要な資格というものは特にはありません

しかし、実際はベンチャーキャピタリストは、候補先のベンチャー企業の経営・財務状態を分析したり、ベンチャー企業の経営に参加したり企業価値が高まった際のEXIT(IPO・M&A)にもかかわるなど様々な業務も行います。

その際に、高度な専門性を持つ公認会計士・税理士・証券アナリスト・ファイナンシャルプランナー・弁護士・MBAなどの資格・知識を持っているとかなり役立ちます。

また、国際的な展開も視野に入れているベンチャー企業もあるので、TOEICなど外国語のスキル・資格があるとさらに良いでしょう。

もちろんこれらの資格は必須ではありませんが、あれば転職を有利に進められる可能性が高くなることでしょう。

それに加え、出資するベンチャー企業が属する分野・業界の専門的な情報や知識も不可欠です。

とはいえ、ベンチャーキャピタリストには、基本的な知識や能力、そして意欲さえあれば無資格未経験でも挑戦できます。

将来性のあるベンチャー企業の応援に興味があるなら積極的にチャレンジしてみてくださいね。

まとめ

現在、ベンチャーキャピタルは転職市場でも人気が高く、転職のハードルも高くなっています。

ベンチャーキャピタルの目的は、将来性のあるベンチャー企業に投資したお金を株式公開・M&Aによる株式売却で回収することです。

しかし、大きく羽ばたく可能性のある企業を探し出し、資金面・経営面等で応援する仕事は、リスクがある反面、成功した時に他では得られないほどのやりがいや達成感、そして高年収を得ることができるでしょう。

また、産業の育成・技術の革新など社会的意義も高い仕事です。

高い金銭的リターンとやりがいを得られるベンチャーキャピタルに興味があるなら、未経験でも転職は可能なのでぜひチャレンジしてみてください。

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