交通事故による怪我の中でもっとも多いのがむちうち(捻挫)です。
交通事故によってむちうちになった相談者の方に後遺障害のことを説明すると、「そんな大げさな怪我ではありません。ただの捻挫です。」と控えめに話されます。交通事故に遭われた後、捻挫やむちうち等の神経症状に悩んでいる方や、ひどい痛みや痺れが生じているにも関わらず、保険会社や勤務先から「捻挫やむちうち程度で」と言われてつらい思いをしている方もいます。
しかし、むちうちは、自賠法施行令に定められている後遺障害認定基準において、「精神・神経症状」という系列に分類されていて、決して軽く見てはいけない受傷です。自賠責保険が平成25年に出した後遺障害系列別の統計では、この「精神・神経症状」で後遺障害等級の認定を受けた方がもっとも多く、全体の46%を占めているのです。
つまり、むちうちを中心とする神経症状で後遺障害認定申請をし、等級の認定を受けている方が沢山いるということです。
実際に当事務所でも今まで多くの依頼者の方が、むちうち・捻挫で後遺障害等級の認定を受けています。
むちうち(捻挫)とは
「むちうち」は正式な病名ではありません。
むちうちは、筋肉や神経の異常で、部位や傷害の態様に応じて、様々な診断名があります。
例えば首の場合には、「頚椎捻挫」「頚部挫傷」「外傷性頚部症候群」「バレーリュー症候群」「頚椎椎間板ヘルニア」「頚椎症」「脳脊髄液減少症」などの診断名があげられます。
これらの傷病の中には、事故直後から自覚症状があるものありますが、2~3日しなければ自覚症状に気がつかないものや、中には2~3ヶ月経過した後に自覚症状が出てくることもあります。
受傷部位の神経や筋肉に異常が生じたことによって症状が生じるため、絶対にこういう症状があらわれるというような基準がありません。痛みや痺れが主な症状ですが、このほか人によっては吐き気や耳鳴り、頭痛等が現れることもあり、症状の程度も様々です。そのため、とてもつらい思いをしているにも関わらず、周りが理解してくれない等の深刻な悩みを抱える方も少なくありません。
むちうち(捻挫)の後遺障害等級認定基準
むちうちの場合に後遺障害として認定される可能性がある等級は次の2つです。
第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
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第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
むちうち(捻挫)の後遺障害等級認定判断基準
<12級の局部に頑固な神経症状を残すもの>
自覚症状が他覚的所見(検査結果や画像所見によって外部から認識できること)により、事故による症状として証明可能な場合をいいます。
<14級の局部に神経症状を残すもの>
事故の状況、診療経過からわかる症状に連続性・一貫性があり、事故による症状として説明可能であり、医学的に推定できる場合をいいます。
12級と14級の違いは、説明可能か、証明可能かの違いになります。
被害者の自覚症状が事故を原因とするものであることが「医学的に証明できる」場合は12級に該当し、自覚症状が事故の態様などから「説明できる」範囲に留まる場合は14級が該当し、それ以外の場合、つまりは医学的に説明することも証明することもできない場合が非該当となります。
なお、医学的に証明できる場合というのは、レントゲンやMRI等の画像所見や、神経学的所見等の他覚的所見をもとに障害が判断できる場合をいいます。
むちうちでは、レントゲンやMRI検査などの画像所見に原因が現れないことが多くあります。画像所見が無くとも適切に後遺障害の認定が受けられるように、後遺障害申請の際には、要点を押さえた後遺症診断書の作成を依頼して、不当な判断をされないようにすることが大切です。
「椎間板ヘルニア」と診断されたら...
「ヘルニア」はよく耳にする傷病です。「ヘルニア」とは、「本来あるべき場所から飛び出た状態」を意味します。つまり、椎間板ヘルニアというのは、「椎間板が、本来あるべき場所から飛び出ている」状態ということです。
「椎間板」というのは、脊柱を構成する椎骨という骨と骨の間にある衝撃を吸収するためのものです。この椎間板が何らかの拍子に飛び出てしまうことを「椎間板ヘルニア」といいます。
椎間板ヘルニアが生じた場合、それが原因となって脊髄(神経)が圧迫され、四肢に痺れや疼痛(痛み)が生じることがあります。例えば腰椎(腰)の椎間板ヘルニアが生じた場合は、下肢(足)に疼痛や痺れが生じます。
自賠法施行令に定められた後遺障害認定基準上で、椎間板ヘルニアはむちうちと同様「神経系統の機能障害」として判断されます。
認定される後遺障害等級は12級13号か14級9号です。
椎間板ヘルニアは、椎骨と椎骨の間から椎間板が突出してしまうことなので、通常MRIの画像上で認識することができます。ただし、それでは椎間板ヘルニアと診断された場合、MRIの画像により医学的に証明できることから、自賠責保険に後遺障害認定申請を行えば必ず12級が認められるのかというと、実際はそうではありません。
椎間板ヘルニアは、年齢を重ねることによって生じることや、仕事で重いものを持つことが多い人が患うことも多いため、MRI画像上で椎間板ヘルニアが確認できたとしても、それが交通事故以外の要因を原因としているとして、既往症と判断されてしまうことが多いのです。
自賠責保険に後遺障害認定申請を行う場合は、その椎間板ヘルニアが交通事故によって生じたものであるということがわかるように後遺障害診断書等の申請書類に十分に注意する必要があります。
後遺障害認定申請の結果に納得がいかない方、適切な等級の認定を受けることができなかった方、非該当になってしまった方でも、受傷が適切に評価されていないのであれば、そこで諦めることはありません。自賠責保険には、「異議申立」という制度があります。異議申立とは、その名の通り、後遺障害認定申請の結果に異議があると自賠責保険に申請することです。
当事務所では異議申立のご依頼も受けております。
特に、相手方保険会社を通して申請する「事前認定」により後遺障害等級の認定を受けた方が、当事務所で異議申立を行った結果、非該当から等級認定に至ったケースや、等級が上がったケースは決して珍しくありません。
中には、一度専門家に依頼して後遺障害認定申請を行い、認定結果に納得できなかったという方が、当事務所で異議申立を行った結果、適切な等級が認められたというケースもあります。諦めてしまう前に、是非一度ご相談ください。
むちうち(捻挫)で後遺障害等級の認定を受けたら
相手方保険会社の提示してくる示談金の金額は、保険会社の基準によるものです。保険会社の担当者は、あたかもその提示額が上限であるかのような説明をしてきますが、それは保険会社の基準による場合です。保険会社の提示する金額は、弁護士が交渉する際に使用する裁判所の基準と比べると、相当に低い金額がほとんどです。
例えば、むちうちで後遺障害等級の12級もしくは14級が認定された場合、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」を保険会社に請求することができますが、この内の後遺障害慰謝料ひとつをとっても、両者の基準の間には、下記の図のように3倍以上の差があります。
自賠責基準 | 裁判所基準 | |
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第12級 | 93万円 | 290万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
それでは、むちうちで後遺障害等級の認定を受けた場合、トータルでは実際どのくらいの賠償が認められるのでしょうか。
当事務所の依頼者で、むちうちで後遺障害等級の認定を受けた方の参考事例を紹介します。
<後遺障害等級12級13号>
男性(40代 会社員)
- 入通院慰謝料:132万円
- 逸失利益:707万円
- 後遺障害慰謝料:290万円
<後遺障害等級14級9号>
男性(60代 会社員)
- 入通院慰謝料:130万円
- 逸失利益:88万円
- 後遺障害慰謝料:110万円
いかがでしたでしょうか。
むちうちで後遺障害等級の認定を受けたい方、賠償金の増額交渉をしたい方、是非一度当事務所にご相談ください。