解決事例
Solution
事例の概要
相手方保険会社が提示していた示談額から650万円増額して解決した事例(80代 無職)
事故態様 車vs車
被害者は友人の車に同乗中、対向車線からきた車に衝突されました。
解決に至るまで
被害者は本件事故により多発骨折等、多数の怪我を負いました。心静止状態で事故現場から病院へ救急搬送されましたが、病院に到着してすぐに死亡が確認されました。
事故発生から2ヶ月後、相手方保険会社からご遺族に対し、示談金の提示がありました。ご遺族は金額が妥当なのかわからず、適切な解決を図りたいと当事務所にご相談にみえました。
ご相談の際、当事務所の弁護士は、相手方保険会社の提示案を精査して、いくつかの項目で増額が図られるべきであると判断しました。
そこで、被害者からご依頼を受け、相手方保険会社との交渉を行いました。粘り強く交渉を重ねた結果、相手方保険会社が提案額から650万円増額した金額の支払いを受けて解決に至りました。
解決のポイント
本件で弁護士は、お金ではないが、きちんと解決してあげたいというご遺族のお気持ちに沿うため、交渉にあたってまいりました。
交通事故における死亡事案では、死亡慰謝料、葬儀費用、死亡逸失利益の3つの項目に特に注意が必要であり、これらの項目で増額を図るべきケースが多くあります。
具体的にどのようなものなのか、以下にご説明します。
(1) 死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故で被害者が亡くなったことにより被害者本人や遺族に生じた精神的苦痛等に対する賠償です。
死亡慰謝料の計算基準は大きくわけると2通りあります。ひとつは自賠責保険の基準と、もうひとつは裁判所の基準です。どちらの基準に則って計算するかで金額に差があります。それぞれどのような基準なのかを説明していきます。
まず、自賠責保険の基準についてです。自賠責保険の基準とは、自賠責保険から支払われる金額に関する計算基準です。
自賠責保険の死亡慰謝料の計算方法は、相続人の人数によって変わります。相続人が1名の場合は900万円、2名の場合は1000万円、3名の場合は1100万円で、3名以上は人数が増えても1100万円です。これに加えて、もし被害者に扶養家族がいる場合は、上述の金額に200万円が加算されます。
たとえば、夫・妻・子2人の4人家族で夫が交通事故によって死亡したケースでは、1100万円に200万円を加えた1300万円が自賠責保険基準の死亡慰謝料の金額となります。
次に、裁判所の基準についてです。裁判所の基準とは、裁判所における交通事故訴訟の積み重ねの中で裁判所が裁判で認めうる金額の一定の目安です。
裁判所の基準は、亡くなった被害者が家族の中でどのような役割を担っていたかによって金額が変わると考えられています。具体的には、「一家の支柱の場合」、「一家の支柱に準ずる場合」と「その他の場合」の3つがあります。
まず、「一家の支柱の場合」とは、被害者の収入によって家族が生計を維持していた場合を指し、その場合の死亡慰謝料の金額は2800万円とされています。次に、「一家の支柱に準ずる場合」とは、一家の支柱ではないけれども一家の支柱に近い役割を果たしている場合を指し、たとえば家事の中心をなす主婦や、独身者であっても家族に仕送りをしているなどが該当します。この場合の死亡慰謝料は2500万円です。そして、上記いずれにも該当しない場合がその他の場合です。その他の場合の死亡慰謝料は2000万円~2500万円とされています。
(2) 葬儀費用
交通事故により被害者が亡くなってしまった場合、その遺族は、葬儀に係る費用を賠償金として加害者に請求することができます。
葬儀に係る費用とは、葬儀そのものの費用だけではありません。法要、仏壇や墓石の建立費など、一般的に葬儀に必要だとされる費用一式を含めて考えることができます。
そして葬儀費用にも自賠責保険基準と裁判所基準があります。
まず、自賠責保険基準です。自賠責保険基準の葬儀費用は、原則60万円とされています。ただし、60万円以上の出費があり、なおかつ自賠責保険会社が必要かつ相当な出費であると判断した場合は100万円まで上限を広げることができます。
次に、裁判所基準です。裁判所基準の葬儀費用は、原則150万円を上限として、実際にかかった出費額の支給が考えられています。
(3) 死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、被害者が交通事故で亡くなっていなければ得ることのできた利益のことをいいます。 死亡逸失利益の算定方法は、「基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」です。なお、年金受給者の場合は、就労可能年数に対応するライプニッツ係数の代わりに、平均余命年数に対応するライプニッツ係数を用います。
死亡逸失利益の算定にあたって、ポイントとなるのは、「生活費控除率」を何パーセントにするかと、就労可能年数(年金受給者の場合は平均余命年数)を何年とするかの2点です。
① 生活費控除率
生活費控除率とは、被害者の収入のうち、生活費として費消されたであろう金額の目安を算出するためのものです。どの程度控除されるかは、被害者の年齢・性別等の詳細に応じて用いる数字が異なります。通常は、30%~50%の範囲となります。年金受給者の場合は通常より高くなる傾向にあり、判例の中には裁判所が60%と認定した事案もあります。
相手方保険会社が死亡逸失利益を算定する際は、高い生活費控除率を使っていることが少なくありません。こういったケースでは、被害者の生活状況に則した数値で算定しなおす必要があります。
② 就労可能年数
就労可能年数は原則67歳までです。67歳を超える方については平均余命の2分の1、年金受給者の場合は平均余命を用いて計算します。平均余命は、国が毎年出している「簡易生命表」という統計に掲載されています。相手方保険会社の計算では就労可能年数が少なく見積もられていることがありますので、適切な数値が引用されているかを確認しておくことが大切です。
このように、相手方保険会社が提案する示談金額は、裁判所の基準をもとに適切な賠償額を算定し交渉していくことで増額を図ることができるケースが多くあります。もっとも、死亡逸失利益のように、被害者の状況によって使う数字が異なることがあります。どういう事案でどのような算定方法をとるか、どのように交渉を進めていくかは、弁護士の同種事案の経験や知識によるところが大きいです。適切に解決したいとお考えの方は、まずは一度、当事務所の弁護士にご相談ください。
大切なご家族を突然の交通事故によって失ったというご遺族の方の悲しみは計り知れません。悲しみを取り去ることは私たちにはできませんが、せめて、この解決が安心への一助となればと願っております。